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鏡、がある。
霧のように降りしきる雨を映した、鏡がある。
そこに映る姿を見て、思わず口元の微笑を深めた。
自分が雨を喜んでいる事に、初めて気づいた、その可笑しさだった。
こんなにも、兄とは違う。何よりも、その事が可笑しかった。
やがてその唇は、雨音に混じって、ひとつの歌を口ずさみ始める。
―――誰かに囁くような、暗い日曜日を。


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